オーストラリアデー(Australia Day)が意味するものとは

毎年1月26日は、オーストラリアの建国記念日です。南半球に位置する夏真っ只中のオーストラリアでは、思い思いの国民の祝日を過ごしています。

オーストラリアは以下3つの自治権によって治められているため、居住区によって祝日が異なる。
・Federal(国)←オーストラリアデーはこれ!
・State/Territory(州/準州)
・Local(地方)

ビーチへ行ったり、家族や親戚とバーベキューをしたり、クリケットを観たり。

また、この祝日が終わると新学年がはじまるということもあり、お子さんのいる家庭では、学校へ持って行く文房具の準備に追われることもしばしば。

このお祝いムードの中、複雑な心情でこの日を迎える人もいます。

さかのぼること1788年。イギリスの航海者ジェームズ・クック(Captain James Cook)は、現在のオーストラリアをイギリス領に宣言。

しかしこの土地は、約6万年以上前より先住民アボリジナル(Aboriginal People)が生活を営んでいる事実は無視され、その結果、持ち込まれた病気や武器の使用により、多くの先住民の命が失われた。

その後1901年1月1日にイギリス領から独立し、オーストラリア連邦が発足するものの、先住民は国民として数えられず、植物や動物と同じ種類とみなされた。

また1910年から1970年頃まで、先住民のこどもたちを白人と同じ教育を受けさせるために、強制的に家族の元から引き離され、その家族の元へ戻ることや、自分のルーツがわからないようになってしまった。

現在のオーストラリアは、多文化国家(multicultural country)を掲げており、人権を保障したり、差別を禁じる法律が確立されています。また2008年に当時の首相ケビン・ラッド(Kevin Rudd)より、被害に遭われた方やその方々を祖先にもつ先住民に対し、国として正式な謝罪がされました。

とはいうものの、現実は甘くなく、先住民とその他のオーストラリア人公平な立場に立つことは、まだまだ時間がかかることだと見られています。

例えば、教育・学歴の格差から生じる貧困問題、負の歴史が代々と続くことによる世代を超えたトラウマ、そして、そこから生じるメンタルの問題やアルコール・薬物の問題と、わたしがオーストラリアで勉強し、教員として働いた中でも目にする問題はたくさんあります。

そしてタイトルにある『オーストラリアデー(Australia Day)が意味するものとは』ですが、祝日を『建国記念日』と考える人がいる一方で、『侵略された日(Invasion Day)』と感じる人もいるのです。

この論議は1930年代後半よりつづくもので、いまだみんなが納得する結論には達していません。

わたし自身オーストラリア国籍は取得していませんし、先住民が少ないエリアで生活しているため身近な問題かと聞かれれば、そうじゃないのでしょう。

しかし、小学校教員という立場で、社会科の授業で歴史や政治を教えた際に、「オーストラリアはどのようにオーストラリアデー(Australia Day)を考えていくべきなのか」「負の歴史を繰り返さないためには何をすべきなのか」「もしも負の歴史が再び繰り返されそうになったら、どのような方法でやめさせることができるのか」などを、こどもたちと熱い議論を交えたことが懐かしいです。

この記事のタイトルだけを考えたら、日本人のわたしには直接関係のないことなのかもしれません。

しかし、わたし自身オーストラリア人のミックスのこどもを育てている母として、また未来の人材育成をしている教員という立場からみたときに、決して人ごとではないのです。

そして、この問題だけに関わらず、相手の立場に立ってものごとを考えられたり、相手の気持ちに寄りそって思いをせられたり、自分とは違う意見を受け入れられる人材こそが、よりよい未来をつくっていくのだと信じています。その成長過程を英語というツールを通じて、お手伝いができたらと考えています。